• 社会的参照~笑顔を手がかりに~
  • [身のまわりの世界を理解するために]今まで見たことのない「何か」(対象)が目の前に現れたら、どうしますか?あれは何?危険なもの?イヌやネコなら、まずその対象のにおいをかいだり、対象に向かって吠えたりするでしょう。人はどうやって対象を理解するのでしょうか。
  • [大人に問い合わせる]赤ちゃんを抱っこしてお散歩していると……むこうから大きな犬がやってきました!・赤ちゃんは目をまんまるくして、そちらを見つめています。姿勢は緊張して固くなっています。・その後どうするでしょう?だっこしてくれているお母さんの顔を見上げます。
  • [大人に問い合わせる行動:社会的参照]生後10ヶ月くらいの赤ちゃんは、「あれは何?」と問い合わせるように、お母さんなど近くにいる大人の顔を見上げるようになります。これは、赤ちゃんが「人」を介して身の回りの世界(「何か」)を理解できるようになったことのあらわれです。
  • [発達心理学者キャンポス博士の実験]このことがわかったのは、視覚的断崖装置という道具を用いた実験です。台の半分(図では右側)がガラスばりになっていて、床の市松模様が見えます。赤ちゃんからは、ガラスばりの部分はガケになっているように見えます。
  • [発達心理学者キャンポス博士の実験]台の上に赤ちゃんを乗せ、お母さんが見た目のガケの向こう側から「おいでおいで」と笑いながら赤ちゃんを誘います。赤ちゃんはお母さんに向かってハイハイをしていきますが、見た目のガケの手前では、ガケを怖がって止まってしまいます。そこで、どうしたかというと……
  • [“お母さん、ここを渡っても大丈夫?”]どの赤ちゃんも、お母さんに問い合わせました。お母さんが笑顔ならば、赤ちゃんはおそるおそるではあっても、見せかけのガケの上を通ってお母さんの元まで行きました。
  • [お母さんを介して世界を理解する]もしも赤ちゃんがガケに落ちそうなのだとしたら、お母さんが笑顔で「おいでおいで」と誘うはずはありません。赤ちゃんは、お母さんの様子を見て「ここは渡っても大丈夫なところなんだ」と理解するわけです。
  • [まとめ]生後10ヶ月くらいになると、赤ちゃんは他者を介して身の回りの世界を理解するようになります。自分と世界という2つの間の関係だけでなく,自分と他者とモノという3つの間の関係が使えるようになるのです。
  • [参考文献]Campos, J. J., Barret, K. C., Lamb, M. E., Goldsmith, H. H., & Sternberg, C. (1983). Socioemotional development. In P.H. Mussen (Ed.). Handbook of child psychology. Vol.2. Infancy and developmental psychology. N.Y.: Wiley, pp.783-915. 向井美穂 (2003).社会的参照の発生メカニズムー個人差 「人指向」・「物指向」の検討. お茶の水女子大学人間文化論叢,6,83-93.内田伸子(編) (2008). わかりやすい乳幼児心理学.ミネルヴァ書房.
  • [お薦め図書]内田伸子(編) (2008). よくわかる乳幼児心理学.ミネルヴァ書房.
  • [関連コンテンツ]社会的参照をするようになる生後10ヶ月頃の赤ちゃんには、個性も見えてきます。関連コンテンツ『個性のめばえ』も見てみてください!
  • [製作者]内田伸子(お茶の水女子大学名誉教授・筑波大学) 作成協力 武田美亜(青山学院女子短期大学)