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  • 嘘つきは目をそらす?嘘にまつわる神話ある日のことです放課後、帰ろうとすると・・・放課後、帰ろうとすると・・・放課後、帰ろうとすると・・・「嘘をついている」 ことは 何からわかりますか?•	この質問を58カ国の人に聞いた調査があります1)。•	最も多かった回答は 「目をそらす」 (約64%)でした。•	2位以下の回答と 2倍以上の差です!嘘をつくと本当に目をそらす?•	心理学の研究では、嘘、もしくは真実を話すときの視線の動きを比べます。•	ただし、ある研究で 「嘘つきは目をそらす」 という結果になっても、別の研究では違う結果になることもあります。嘘をつくと本当に目をそらす?•	それぞれの研究の結果から判断すると、間違った結論を下す危険があります。•	そのため、これまでの研究の結果を1つにまとめ、総合的に判断します。•	視線の指標をまとめた分析(凝視:32研究、回避:6研究) では、以下の結論が得られました2)。「嘘つきは目をそらす」 と考える理由•	なぜ 私たちは 「嘘つきは目をそらす」 と考えて  しまうのでしょうか?•	この理由について いくつかの説明があります3-5)。•	そのうちの代表的なものを見ていきましょう。内面が行動に表れると考える•	人は一般に 「嘘は悪いもの」 だと考えています。•	そして、嘘をつくときに罪悪感や不安を感じるはず だと 単純に考えています(実際はそうとも限らない)。内面が行動に表れると考える•	「視線をそらす」 は、罪悪感や不安を示す行動です。•	そのため、私たちは嘘をつくときにも 同じ行動を  示すと考えてしまうのでしょう。間違った知識を学習している•	小説、ドラマ、映画で、「嘘つきは目をそらす」 と 描かれることがあります。•	また、一般的なマニュアル本で、嘘つきの行動  として書かれていることがあります。•	これらの情報に触れると「嘘つきは目をそらす」という考えが強まります。そもそも 正しい学習ができない•	嘘かどうかを判断しても、それが正しいかどうかすぐにわかることはほとんどありません。•	そのため、私たちは人が嘘をつくときの行動を適切に学習することができません。•	適切な学習ができないと、嘘についての間違った 考えが維持されます。自分の考えに一致するものを見る•	人は 一度ある考えを持つと、その考えに一致する情報を集める傾向があります。•	「嘘つきは目をそらす」 という考えを持っていると、 疑ったときに 「目をそらす」 という行動ばかりが  目に入ってきます。•	行動がないのにあったと判断することもあります。自分の考えに一致するものを見る冒頭のお話に戻ってみましょう•	Bちゃんは目をそらしました。•	ただし、Aくんが誘ったときには、すでに予定が入っていて、申し訳なくて、目をそらしたのかもしれません。まとめ•	「嘘つきは目をそらす」 という考えは、多くの人々に共通した考えです。•	しかし、多くの研究からは 「嘘つきは目をそらす」 という考えは支持されていません。•	この考えは、嘘にまつわる 「神話」 にすぎないの かもしれません。引用文献1) Global Deception Research Team. (2006). A world of lies. Journal of Cross-Cultural psychology, 37, 60-74.2) DePaulo, B. M., Lindsay, J. J., Malone, B. E., Muhlenbruck, L., Charlton, K., & Cooper, H. (2003). Cues to deception. Psychological bulletin, 129, 74-118.3) Strömwall, L. A., Granhag, P. A., & Hartwig, M. (2004). Practioners’ beliefs about deception. In P. A. Granhag & L. A. Strömwall (Eds.), The detection of deception in forensic contexts (pp. 229-250).  New York: Cambridge University Press.4) Vrij A (2008). Detecting lies and deceit: Pitfalls and opportunities. Chichester: John Wiley & Sons Ltd. (ヴレイ,A.太幡 直也・佐藤 拓・菊地 史倫 (監訳)(2016).嘘と欺瞞の心理学\\対人関係から犯罪捜査まで:虚偽検出に関する真実\\ 福村出版)5) Hartwig, M. & Granhag, P. A. (2015). Exploring the nature and origin of beliefs about deception: implicit and explicit knowledge among lay person and presumed experts. In P. A. Granhag, A. Vrij & B. Verschuere (Eds.), Detecting deception: Current challenges and cognitive approaches (pp. 125-154). Chichester: John Wiley & Sons Ltd. (ギヨンゴビ, P. A・ヴレイ, A.・フェルシュクーレ, B. (編著),荒川 歩・石崎 千景・菅原 郁夫(監訳)(2017).虚偽検出\\嘘を見抜く心理学の最前線\\ 北大路書房)6) Levine, T. R., Asada, K. J. K., & Park, H. S. (2006). The lying chicken and the gaze avoidant egg: Eye contact, deception, and causal order. Southern Communication Journal, 71, 401-411.お薦め図書•	村井 潤一郎 編著 (2013).嘘の心理学 ナカニシヤ出版– 第3章 「嘘と非言語行動・言語行動」 では、嘘の            手がかりとしての非言語・言語行動の有効性と限界       が説明されています。•	アルダート・ヴレイ(著),太幡 直也・佐藤 拓・菊地 史倫    (監訳)(2016).嘘と欺瞞の心理学 福村出版 - 嘘全般の心理学的研究が紹介されています。 - 第5章 「欺瞞の非言語的,言語的手がかりに                関する信念」では、人が間違った嘘の手がかり                を用いる理由が説明されています。
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  • オススメ展示

    • 人に対する思い込み(〜ステレオタイプと光と影〜)
    • 傾いて見える(斜塔錯視)
    • みんな違って みんないい(個性のめばえの謎を解く)
    • 自分がやらねば誰もやらない?(傍観者効果)
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資料名:20190701_mythsaboutlies.pdf(1.1MB)

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