解説 |
19世紀の最後の四半世紀はヴントが心理学的時間測定に最も力を注いだ時期であり、彼の主著の初版からHippのChromoskopが登場している。そして主著は第7版に至ったが、Chronoskopはそれ以上に改装をかさねていた。この写真のようなギリシャ風の四本柱のものが初期のもので、4個のターミナルが下段についているものが最も古く、ついでそれらが上段に設置され、鉄柱3本足や4本足など様々なものが出まわり、測定誤差を減らすための付加装置がついたりする。世界の古い歴史を持つ心理学実験室の陳列棚には必ずといってよい程展示されているが、おおむね破損状態のままである。ドーム型のガラスケース(写真では見えないが)は滅多に生き残っていない。その点この写真のものは外観も機能も世界で最も良く保存され散るクロノスコープである。大きい文字盤の目盛りが1目盛1ms。この装置の機械的測定誤差に関しては極めて多数の研究論文が存在する。
これは1906年(No.9)に既に松本亦太郎によってZimmermann社より90円で購入されていたものが京都大学にもたらされた。 参考文献:苧阪直行 2000 心理学研究における古典機器 苧阪直行(編) 2000 実験心理学の誕生と展開. 京都大学学術出版界 Pp.327-345. |