心理学ミュージアム

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ごあいさつ

この「歴史館」では、長い歴史をもつ心理学の姿をお伝えするとともに、これからの心理学の方向性を探る一つの手立てとして、これまで心理学が辿ってきた道筋についての情報を提供します。そのような情報は幾種類も考えられますが、まずは心を捉える手段として心理学が開発し利用してきた実験機器類を取り上げます。今はもう使われていない「古典的機器」です。

日本では、明治時代の半ばに東京帝国大学で心理学実験室が開かれたことから心理学の実験が始まりました。そのころからすでに、人間のみならず動物の心の働きを捉えるためさまざまな機器が用いられていました。そのころの機器は今ではもう使われておらず、特に1980年代以降はパーソナル・コンピュータが普及したため、ほとんど顧みられなくなりました。

しかし、心理学という学問の進め方や特徴を理解するには、明治時代の心理学草創期から使われてきた機器類とその後の変遷を知ることが役立ちます。心の働きを測るのにどのような機器が開発され、それらがどのように改良されてきたのでしょうか。また、そうした機器を使って測ることにはどのようなメリットや問題点があったのでしょうか。それらを知ることを通して、心を科学的に捉えることの意味と難しさを理解していただけると思います。

ここでは、各地の大学などに残っている実験機器類を「心理学古典的実験機器」として記録し、それらをウェブ上のミュージアムに集めて展示します。「古典的機器」とはいつ頃までのものを指すのでしょうか。狭くとれば第二次世界大戦終了頃までの、帝国大学や旧制高校、師範学校などで使われていた機器類と言えます。しかし、心理学が辿ってきた道筋を知るには、その後の変遷も含める方がわかりよいと言えます。そこで「歴史館」では、将来的にはコンピュータ化が進む1980年以前の実験機器を含めたいと思います。

いくつかの大学では、大先輩たちが使った古典的実験機器を大切に保存しています。「歴史館」を作るにあたり、そうした研究室に協力して頂き、1つ1つの機器をさまざまな角度から高精細写真に撮影し、その機器に関わる情報を調べさせてもらいました。今もその作業は続いていますが、「歴史館」がスタートする現時点で収録するのは、戦前、帝国大学だった東京大学、京都大学、東北大学、それに2つの私立大学、関西学院大学と立命館大学の合わせて5つの大学です。

最後になりましたが、この「歴史館」は、日本心理学会の教育研究委員会の中に設置されている資料保存小委員会が作成し、同じく教育研究委員会の博物館小委員会が運営するウェブページ「心理学ミュージアム」で公開しております。今後も資料探索を進め、残すべき貴重な資料・情報を提供していくつもりでおります。日本心理学会の会員の皆さんのみならず、心の科学に興味をもっておられる多くの方々に広く活用されることを願っております。

2015年7月

日本心理学会・教育研究委員会内 資料保存小委員会 吉村浩一