• “体”を温めると“心”も温まる 身体化認知
  • こんな経験ありませんか? 温かい飲み物にほっとする 寒い日に,無性に人に会いたくなる
  • 脳には「島皮質(とうひしつ)」という部位があります。島皮質は,「身体」が温かさを感じた時と,「心」が温かさを感じた時の,両方で反応することが
知られています。 そのため,私たちは「身体」の温かさと「心」の温かさを,混同しやすく,温かいものを持つと,心までほっと温かくなったように感じるのです。
  • 温かいコーヒーカップに触れると,他者を「温かい人物」であると感じやすくなる,という実験結果もあります。もちろん,手に持ったものの温度だけで,すべての印象が決まるわけではありませんが,なにかを判断するときに「温度」がひとつの手がかりとなりうる,というのは面白い現象だと思いませんか?
  • 身体が冷えると、脳の中で「心の冷え」を感じる部分と同じ部分が反応します。そのため・・・冷たいものを持つと「孤独感」を抱きやすくなるのです。
  • たとえば・・・「寒々とした病室」「人恋しさに震える」…など,寂しさと「冷え」のつながりを示した表現は,たくさんありますよね。
  • 私たちの思考や行動は,知らずしらずのうちに身体感覚の影響を受けているのです。これを身体化認知と,いいます。温度感覚以外の例として……
  • 硬いものに触れると,「頑固さ」が増したり…
  • 苦味を感じると,間違った行為を「まずい」と判断しやすくなったり・・・
  • 清潔感のある香りを嗅ぐと,「クリーンな行為」への関心が高まったり…
  • 重いものを持つと,何かを「重要だ」と感じやすくなったりします。
  • このほかにも,紹介していない感覚(例:視覚,運動感覚)を扱った「身体化認知」の研究はたくさんあります。たとえば,私たちが普段よく耳にする日本語の中にも心と身体の繋がりを示すヒントは隠れているのです。 視覚→ 明るい性格,白黒つける 運動感覚→ 大手を振る, 足を引っ張る・・・それぞれ,どんな研究につながりそうでしょうか?みなさんも,考えてみてください。
  • もしも,あなたが普段の生活の中で「孤独だな…」 と感じたり「やさしい」 気持ちになりたいと思ったときは,「温かい飲み物」 を飲んでみる,というのも一つの手かもしれませんね!
  • 身体感覚は,人の「認知」「感情」「行動」に影響を及ぼす。身体の感覚は,心理的作用とのつながりをほとんど意識されないままに,働いている。つながりのヒントは,私たちが普段使っている言葉の中の「メタファー」にみられる。
  • Ackerman, J. M., Nocerra, C. C., & Bargh, J. (2010). Incidental haptic sensations influence social judgments and decisions. Science, 328, 1712-1715.Bargh, J. A., & Shalev, I. (2012). The substitutability of physical and social warmth in daily life. Emotion, 12, 154-161. Eskine, K. J., Kacinik, N. A., & Prinz, J. J. (2011). A bad taste in the mouth: Gustatory disgust influences moral judgment. Psychological Science, 22, 295-299.Jostman, N. B., Lakens, D., & Schubert, T. W. (2009). Weight as an embodiment of importance. Psychological Science, 20, 1169-1174.Lilijenquist, K., Zhong, C.-B., & Galinsky, A. D. (2010). The smell of virtue: Clean scents promote reciprocity and charity. Psychological Science, 21, 381-383.Williams, L. E., & Bargh, J. A. (2008). Experiencing physical warmth promotes interpersonal warmth. Science, 322, 606-607.
  • 串崎真志(2013) 共感する心の科学 風間書房「共感」に関する最新の研究が様々に取り上げられている中で,その基礎として「身体感覚」の重要性が論じられています。身体化認知に関する最新の研究も,とてもわかりやすく紹介されています。 リチャード・ワイズマン(2013) その科学があなたを変える 文藝春秋-科学の実験に基づいた知見が,すぐに試せる45個のメソッドとしてまとめられており,身体化認知に限らず,日常生活に生かせる知識が多数取り上げられています。 山口創(2012) 手の治癒力 草思社「触れる」という行為と,心身の健康との関係をテーマとした書籍で,皮膚感覚に関する身体化認知研究が,温かなイラストと共に紹介されています。
  • 製作者 山本佑実 (関西大学大学院 心理学研究科)