• 自分がやらねば誰もやらない?-傍観者効果-
  • 突然ですが、次の事件を知っていますか? 深夜の住宅街、自宅アパートに帰宅途中のキティ・ジェノヴィースという女性が、駐車場で暴漢に襲われ刺殺されました。殺されるまでの時間:30分以上 目撃者:アパート住人 38名 通報者及び救助者:0名!!※これは1964年のニューヨークで、実際に報道された内容です。住人らは彼女の悲鳴を聞いただけでなく、部屋の明かりをつけ、窓辺からこの事件を目撃していました。それにも関わらず、誰一人として、彼女を助けることも、さらには警察に通報することも、なかったのです。
  • なぜ、これほどの時間と目撃数がありながら、住民らは、誰も、彼女を救助したり、通報したりしなかったのでしょうか?
  • その理由は、報道では、「アパート住民たちは、他人に興味がなかったから」
と、言われていました。しかし!!!この報道に対し、ある学者が、「住民たちが、誰も彼女を助けなかったり、通報しなかったのは、自分の他にも目撃者がいたからである!」と指摘し、このことを次の実験で示しました。
  • [実験]想像してみてください。① あなたは、「アンケート調査に協力してほしい」という理由で、あるマーケット・リサーチ会社まで呼び出されました。② 到着すると、女性職員が、あなたを部屋まで案内してくれました。③ あなたがアンケートへの回答を始めると、女性職員は、「記入をなさっている間、私は隣の部屋にいます」 と言い、隣の部屋に移動しました。④ その後、隣の部屋からは、書類を扱っているような物音が聞こえてきます。そして、しばらくすると・・・・・・。
  • [実験]⑤ 何かが倒れる物音と、女性職員の悲鳴が聞こえました!!その後もずっと、うめき声等が聞こえてきます。
  • [実験]ここで、質問です。あなたはA・Bどちらの場合に、「自分が、急いで、女性職員を助けに入ろう!!」と思いますか?A.部屋に、あなたが1人きりでいた場合 B.同じ部屋に、あなたとは別に赤の他人が1人いた場合 それでは、実際にこの事態を体験した人が、A・Bの状況でどのように振舞ったかについて、見てみましょう。
  • [A 1人きりでいた場合]約9割の人が、悲鳴が聞こえてから40秒以内に、助けに入りました。
  • [B 赤の他人といた場合]悲鳴が聞こえてから120秒が経過しても、約4割の人しか、助けに入りませんでした。⇒1人の時よりずっと助けない!!
  • 以上の実験から、「人は、1人でいる時よりも、周りに人がいる時の方が、行動をおこさない」ことが、判明しました。では、なぜ周りに人がいる時の方が、人は行動を起こさなくなるのでしょう?
  • [理由(1)自分が助けに行かなくても、相手が助けに行くだろうと思うから]人は、周りに人がいるだけで、「自分がやらなくても誰かがやるだろう」 という思いから、行動を起こしにくくなると言われています。これを、「責任の分散」と言います。では、もし周りにいる人が助けに行かなければ、自分が助け
ようとするのでしょうか?実はこの場合にも、(1)とは別の理由で、助けに行かないことがあるんです。
  • [理由(2) 相手が助けに行かないということは、大して緊急ではないと思うから]人は、事態が緊急かどうかが判断しにくい時、同じような状況にいる他者の様子から、事態がどれだけ緊急なのかを判断することがあります。このことは、様子を参考にされた相手にも当てはまります。
  • つまり、もしあなたが、「他の人が行動しないってことは、緊急じゃない」と思った場合、一緒にいる人も、あなたの様子から「あの人(あなた)が行動しないってことは、緊急じゃないな」と思ってしまうのです。
  • つまり、キティ・ジェノヴィース事件で誰も救助や通報をしなかったのは「他の人が騒いでなかったから、大変な事態だとは思わなかった」「自分が通報しなくても、誰かがすると思った」このような考えが、住人らに生じたからだと解釈できます。
  • このように、自分の他にも人がいることで、行動が抑制されることを、「傍観者効果」  と言います。
  • [まとめ]この実験を通して、分かったことを確認してみましょう。○ 「誰かがやるだろう」と思った状況では、自分だけでなく、誰もがそう思っている。○ こうした状況では、結果的に、誰も行動を起こさないことが十分にある。○ 誰も行動を起こさなければ、キティ・ジェノヴィース事件のような悲劇を招きかねない。
  • [まとめ]さて、みなさんは、誰かがやるだろうと思った時には、誰もがそう思って行動を起こさないことがあることを知りました。このことを知ったみなさんは、例えば駅で倒れている人を見かけた時、「誰かが助けると思った」「誰かが駅員を呼ぶと思った」とは、言えません。そう思った時こそ、皆さん自身が、手を差し伸べる必要があるのです。
  • [参考文献]Manning, R., Levine, M., & Collins, A. (2007). The Kitty Genovese murder and the social psychology of helping: The parable of the 38 witnesses. American Psychologist, 62, 555-562. 岡本浩一 (1986). 社会心理学ショート・ショート:実験でとく心の謎 新曜社 小川一夫(1987). 社会心理学用語辞典 北大路書房 Rodin, J., & Latané, B. (1969). A Lady in Distress:Inhibiting Effects of Friends and Strangers on Bystander Intervention. Journal of  Experimental Social Psychology, 5, 189–202.
  • [お薦め図書]亀田達也・村田光二(2000). 複雑さに挑む社会心理学: 適応エージェントとしての人間 有斐閣アルマ ・山岸俊男(2001). 社会心理学キーワード 有斐閣双書「今回紹介させて頂いたお話しは、社会心理学という分野の研究にあたります。上記の図書は、どちらも、社会心理学の優れた入門書です。」 ・小口孝司(2013). 史上最強図解:よくわかる社会心理学 ナツメ社 「日常に活かせる社会心理学の法則について、 実験をとりあげながら丁寧に説明されています。」
  • [製作者]植村友里(淑徳大学大学院 総合福祉研究科)