• 透明性錯覚 心の中を読まれているという誤解
  • いきなりですが,まず実験をしてみましょう! 2人1組で行なうのがベストです。あなたは「伝え手」です。もう1人の人には「聞き手」をお願いしましょう。
  • 役割が決まったら… 伝え手は,下の1〜5のうち,どれか1曲を選んでください(何を選んだか,聞き手には秘密です!)選んだ曲を心の中で歌いながら,指だけでトントンとリズムをとって“演奏”してください。聞き手はこれをよく聞いていてください。 1.どんぐりころころ 2.むすんでひらいて 3.いぬのおまわりさん 4.ちょうちょ 5.チューリップ
  • ここで,ちょっと考えてみてください 伝え手への質問 あなたがどの曲を“演奏”したか,聞き手はどのくらい言い当てることができると思いますか? 聞き手への質問 伝え手が“演奏”した曲は何でしょうか?
  • 結果はいかがでしたか? このような実験を行なうと,伝え手は自分が指で “演奏”した曲を聞き手が言い当てられるだろうと思いがちです(推測)。演奏中,伝え手の頭の中では“演奏”している曲が鳴り響いています。伝え手にはその曲が頭の中ではっきり“聴こえて”いるため,他人の頭の中ではその曲が鳴り響いていないということを想像しにくくなるのです。
  • 結果はいかがでしたか? しかし実際には,伝え手以外の人にこの曲は聞こえていません。聞き手にはトントンという音しか聞こえないので,多くの場合,曲を言い当てることができません(実際)。音楽に限らず,人は,自分が心に思い描いていることが他人に伝わっていると,実際以上に推測してしまうことがあります。
  • 自分の心が他人に伝わっていると考えてしまう傾向を透明性錯覚と呼びます。まるで,自分の心を包む膜が透明になって,自分の心が丸見えになっているかのように誤って感じるので,「錯覚」というわけです。
  • なぜ,このようなことが起きるのでしょうか? 人は,他人の心を直接知ることはできません。しかし,自分の心はわかっています。そのため,他人の心がどうなっているかを考える時には,自分の心を手がかりにして推測してしまうのです。
  • 透明性錯覚は,日常のあちこちで起きています。たとえば… 相手に好意を伝えているつもりが… 最近,食欲がないの… 病院に行った方がいいんじゃない?
  • あの言い方でちゃんと好意が伝わっていると思ったのに!
  • おわびの気持ちを伝えているつもりが…
  • びっくりマーク4つに顔文字もつけたんだから,申し訳ない気持ちは伝わると思ったのに…
  • まとめ あなたが自分の気持ちや考えを一生懸命伝えているのに,相手はわかってくれない!と感じることがあるかもしれません。でもそれは,ひょっとしたらあなたの方が「相手はわかってくれるはず」と思いすぎていることが原因かもしれません。相手が「わからない」ことを前提にして,ていねいに説明してみましょう。
  • 参考文献 Gilovich, T., Savitsky, K., & Medvec, V. H.  (1998)  The illusion of transparency: Biased assessments of others' ability to read one's emotional states.  Journal of Personality and Social Psychology, 75, 332-346./MacIntosh, A. E., & Savitsky, K.  (2003)  If you're happy and you know it, will your face surely show it?: The illusion of transparency in facial expressions of emotion.  Paper presented at the 4th annual meeting of SPSP.
  • お薦め図書 ギロビッチ, T.・クルーガー, J.・サビツキー, K. (2001). 日常生活の中の自己中心性と対人的問題  安藤清志・丹野義彦(監訳) 臨床社会心理学の進歩——実りあるインターフェイスをめざして 第3章(Pp.72-105.)北大路書房/武田美亜 (2009). 透明性の錯覚と対人関係 安藤清志(編)自己と対人関係の社会心理学(21世紀の社会心理学シリーズ13)第7章(Pp.84-93.)北大路書房
  • 製作者 武田美亜(青山学院女子短期大学)