• 音を「食べる」 多感覚知覚
  • 突然ですが問題です Q. 食べ物を味わうとき、私たちはどの五感 ( 聴覚 ・ 嗅覚 ・ 視覚 ・ 皮膚感覚 ・ 味覚 )を使っているのでしょう?
  • 多くの人はきっとこう答える A. 「味覚」!
  • 間違ってはいませんが、うーん、△ですね。それだけではないんです!
  • あれっ? △? どうして○じゃないの? 納得できませんか? そのヒントとして、ポテトチップスを使った心理学のユニークな実験をご紹介。
  • 実験の説明 ① ポテチを一度だけ噛んでもらう。② 噛んだ時の音を、高くor低く変換。③ 変換した音を、ヘッドホンを通して聞いてもらう。①~③は同時に行われた。 これを何度も繰り返し、たくさんのポテチの「新鮮さ」を評価してもらった。(噛んだ音を変換したことは、Aさんには内緒)
  • 実験の結果 音の高低により、ポテチの評価が変化した。
  • 驚きの真相!!重要なのは、この実験で用いられたポテトチップスは、すべて同じ製品 ( プリングルス ) だったということ。
  • つまり、噛むときの音を変えるだけで、ポテチの味わいは簡単に変わってしまうのです。
  • △のわけ 食べ物を食べるときに働いていたのは、味覚だけではありませんでした。実は、他の感覚も働いてくれているのです。
  • こんな経験、ありませんか? 目を閉じて物を食べると味がわかりにくくなる 鼻がつまっているとおいしく感じない これらはすべて、他の感覚が働けなかったから。
  • 視覚 : 「見た目」からも味わっている。 [実験]チェリージュースの「色」を隠した状態で、味を当ててもらった。
  • [結果]30%ほどの人しか正解しなかった。
  • 嗅覚 : 「香り」次第で味が生まれる。[実験]味の無くなったガムを噛んでいる人に、チョコレートの匂いをかいでもらった。
  • [結果]濃厚なチョコレート味のガムを噛んでいるように感じた。
  • 皮膚感覚 : 「食感」によっておいしさは変わる。[実験]同じコーヒーを二杯作り、片方には寒天を混ぜてどろっとさせた。この二杯を飲み比べてもらった。
  • [結果]味自体は変わらないはずなのに、多くの人が、どろっとしていると「風味が落ちた」と感じた。
  • まとめ はじめの問いに戻ってみましょう。Q. 食べ物を味わうとき、私たちはどの五感 ( 聴覚 ・ 嗅覚 ・ 視覚 ・ 皮膚感覚 ・ 味覚 )を使っているのでしょう?
  • 正しい回答は、「五感すべて」でした。五感どうしが一緒に助け合いながら働く、これが多感覚知覚という考えです。
  • 世界文化遺産に登録された和食は、見た目と音など五感を使って味わう、まさにその典型です。
  • 参考文献 DuBose, C. N., Cardello, A. V., & Maller, O. (1980).Effect of colorants and flavorants on identification, perceived flavor intensify, and hedonic quality of fruit-flavored beverages and cake. Journal of Food Science, 45, 1393-1399.Pangborn, R. M., Gibbs, Z. M., & Tassan, C. (1978).Effect of hydrocolloids on apparent viscosity and sensory properties of selected beverages. Journal of Texture Studies, 9, 415-436.Stillman, J. A. (2002). Gustation: Intersensory experience par excellence. Perception, 31, 1491-1500.Zampini, M., & Spence, C. (2005).The Role of Auditory Cues in Modulating the Perceived Crispness and Staleness of Potato Chip. Journal of Sensory Studies, 19, 347-363.
  • お薦め図書 ローゼンブラム, L. D. 齋藤慎子(訳) (2011).最新脳科学でわかった 五感の驚異講談社 (Rosenblum, L. D. (2011).
See What I’m Saying The Extraordinary Powers of Our Five Senses. New York: W. W. Norton & Company.)-人間が持つ五感の優秀さを、数多くのユニークな実験で証明した一冊です。非常に読みやすく、専門書に堅いイメージを持っている人にも、お薦めします。
  • 製作者 坂元 亮哉(関西大学大学院心理学研究科)