• みんな違って みんないい〜個性のめばえの謎を解く〜
  • [個性の違いはいつから]生後10か月頃から、赤ちゃんの個性の違いがわかります。ここでは、どんなふうにして赤ちゃんの個性の違いがわかったのか、研究の裏話もまじえてご紹介します。
  • [社会的参照]生後10ヶ月くらいの赤ちゃんは、得体の知れないものが目の前にあるなど、どうすればよいかわからない時、お母さんなど近くにいる大人の顔を見上げて“問い合わせ”をします。キャンポス博士は赤ちゃんとお母さんの間に見せかけの断崖を作って赤ちゃんの行動を調べ、このことを見つけました。
  • [対面型パラダイム]この装置(視覚的断崖装置)では、お母さんは赤ちゃんの正面に立ちます。この場合、赤ちゃんは確実にお母さんに問い合わせをします。
  • [内田伸子研究室では…]研究費が足りず、視覚的断崖装置を用意することができませんでした。それでも社会的参照の実験をする必要があったために、頭をひねりました。そうして考えた結果、床にじゅうたんをしいて、お母さんと赤ちゃんが90度の位置になるように座ってもらうことにしました。
  • [こたつ型パラダイム(内田研究室開発)]赤ちゃんのななめ前から犬型ロボットが近づいてくると、赤ちゃんは目をまんまるにして緊張しているようです。さて、お母さんに問い合わせるでしょうか?
  • [こたつ型パラダイムの結果]ある子は…お母さんを見上げました。別の子は…目は犬型ロボットに釘づけのままです。
  • [こたつ型パラダイムの結果(向井, 2003)]つまり、社会的参照をしない子もいたのでした。これは、対面型パラダイムを使っていてはわからなかった、新しい発見です。(1)生後10ヶ月の赤ちゃんとお母さん100組(お母さんの顔を見上げた子62名、見上げなかった子38名)、(2)1歳半で同じ実験をくり返したところ…62名はお母さんのところに駆け寄った。38名はお母さんに近づくが目は犬型ロボットに釘付けだった!
  • [社会的参照のありなしは個性の表れ?]社会的参照のありなしは、何かの偶然ではなく、赤ちゃんの個性と関係があるようです。というのも、社会的参照のありなしと同じように、1歳半の赤ちゃんがどのようなことばを覚えるかにも違いが見られるからです。
  • [1歳半は語彙爆発が起こる時期]1歳半頃の赤ちゃんは、非常にたくさんのことばを覚えていきます(語彙爆発)。このことを調べるため、赤ちゃんのいるご家庭を訪問する1か月前に、各ご家庭に記録用紙をお届けして、こんなお願いをしていました。「赤ちゃんは、どんな場面でどんなことばを言いましたか?記録をお願いします。」
  • [発話語彙の記録を調べてみると…]赤ちゃんたちは、1週間に平均40語も新しいことばを覚えていました。さらに、社会的参照をした(母親に問い合わせた)子と社会的参照をしなかった(犬型ロボットに気をとられていた)子では、覚えたことばの種類がまるで違っていたのです。
  • [物語型 vs. 図鑑型]62名(社会的参照あり)60%があいさつ、感情表現語 40%は名詞→「物語型」人間関係に敏感 38名(社会的参照なし)95%が名詞、5%が動詞→「図鑑型」モノの因果的成り立ちに敏感
  • [解説]個性は乳児期にめばえます。父親や母親から遺伝情報として受け継ぐのです。同じ両親から生まれたきょうだいでも個性の違いがあります。両親のどちらから個性の中核の「気質(外界への敏感性)」を受け継いでいるかによって違ってくるのです。
  • [「図鑑型」か「物語型」かの分かれ道]赤ちゃんは興味のある対象に接近し、探索し、「地図づくり」「世界づくり」を進めていくのです。モノに興味がひかれる赤ちゃんと人間関係に敏感な赤ちゃんとではつくる世界が違ってきます。外界の何に興味をもつかによって、覚えやすいことばの種類が違うというのは興味深いと思いませんか?
  • [「図鑑型」の子どもは]モノの動きや因果的成り立ちに関心をもつ「図鑑型」、人とつきあうのは少し苦手だけれど、興味をもつモノの探索に集中します。このタイプは男の子に多いです。
  • [「物語型」の子どもは]人とつきあうのが上手な「物語型」は、女の子に多いです。
  • [「みんな違ってみんないい」]どちらの型の人にも、世界で活躍する人たちがたくさんいます。大人は、子ども一人ひとりに寄り添って、得意分野を伸ばす援助をしてあげてほしいと思います。
  • [世界初の発見!]「図鑑型」と「物語型」で、赤ちゃんが獲得することばの種類も違うというデータが出てきました。これは世界で初めての発見です。研究費が足りず、「視覚的断崖装置」が使えなかった、そのおかげで、社会的参照をしない子どもがいることがわかったのです。経済的には恵まれない研究室でもアイディアがよいこと、注意深い観察と実験を繰り返すことが、この発見を導きだしたのだと思います。
  • [参考文献]Campos, J. J., Barret, K. C., Lamb, M. E., Goldsmith, H. H.,  & Sternberg, C. (1983). Socioemotional development.   In P.H. Mussen (Ed.). Handbook of child psychology.  Vol.2. Infancy and developmental psychology.   N.Y.: Wiley, pp.783-915. 向井美穂 (2003).社会的参照の発生メカニズムー個人差「人指向」・「物指向」の検討.お茶の水女子大学人間文化 論叢,6,83-93.内田伸子(編) (2008). よくわかる乳幼児心理学.ミネルヴァ書房.
  • [関連コンテンツ]社会的参照について、もう少し詳しい説明は、展示室内の別コンテンツ『社会的参照』でしています。こちらも見てみてください!
  • [製作者]内田伸子(お茶の水女子大学名誉教授・筑波大学) 作成協力 武田美亜(青山学院女子短期大学)