解説 |
この装置は彼のGrundzuege der physiologischen Psychologie 4 Auflage (1893, s. 334)に初めて描かれ、2頁にわたって詳しく説明されている。これを直訳するとかえって機能が理解しにくいので大意を次に述べることにする。
これは鋳鉄棒を組み合わせた大きな三角塔型の振子とこれを支持する柱と机の組み合わせと架台から成っている。振子と架台との接触部は鋼鉄製のくさびと鋼鉄製の受け台で、運動による摩擦を最小にしている。三角塔の底部に図では見えないが固定重錘があり、頂上と側面に移動重錘が備えられていて振子の速度を調節することができる。振子は左右の電磁石のスイッチの開閉によって振らせる。
Spalt-pendelは直訳すれば裂目振子。振子の底部と側方に四角孔のある鉄製衝立(S1、S3)が二枚固定されている。一方固定架台にはこれらに対応してスケール付きで裂目の調節可能な鉄製衝立(S2、S4)がはめられて、S1、S2で水平型、S3、S4で水平型の裂目を作ることができる。これで振子の一振動時間範囲の瞬間露出器となる。
振子の半周期時間の測定のためにHippのChronoskopへの端子が細長い机の中央の丸い水銀溜に二個みえている。木製の水銀溜盤には約1センチの間隔で左右に水銀の入っている小孔があり端子のネジの根と接触している。水銀は表面張力のため盤面の水準以上にふくれあがっているので振子の下部の接触橇下面の銀鍍金線と電気的に回路を形成できる。接触を最適にするためこの橇は振子下部にある微調整スライド装置によってわずかに上下できる。橇の側面にはmmスケールが貼られ、机上にはインジケータがあるようになっている。1920年代までは、日本語文字の認識実験の為、また短時間電気信号発生装置として利用され、また一般実験においても瞬間露出器として多面期的に使われた。
これは1908年(No.S29)Zimmermann社から293円92銭で購入されている。 参考文献:苧阪直行 2000 心理学研究における古典機器 苧阪直行(編) 2000 実験心理学の誕生と展開. 京都大学学術出版界 Pp.327-345. |